まだ目も開かないうちにシャワーを浴びる。
熟睡したはずの朝なのに、目覚めが悪い。
「そういえばあいつ、元気にしてるのかな?」
何の脈略もなく思い出される過去。
閉じた目蓋の奧に、笑顔でおどけてみせるあいつがいる。
制服で踊るものだから時折スカートがめくれ、見てる僕がヒヤヒヤする。
「ダンス部のスカートの下はジャージだよ、バカね」
僕の小さな嫉妬を可愛い八重歯を見せて笑う。
普段は前髪を作るあいつもダンスをする時は前髪をあげる。
時折みせる真剣な眼差しに改めてドキドキする僕がいる。
こんなに好きだったんだ。
熱めのシャワーがようやく僕を覚醒させる。
ふと記憶の辻褄が合わない事に気付き、慌ててさっきの記憶を辿る。
磨かれた板張りの教室。机と椅子が端に寄せられてできたスペースで踊るあいつ。
教壇の花瓶には見慣れない色のヒマワリ。踊りながら僕を見るたび微笑むあいつ。額の汗が夕日に光る。
僕は中高一貫の全寮制の男子校。僕の初めての恋人は、大学のゼミで知り合った1つ年上の女性。そう、今の妻。
だから、こんなシチュエーションは僕の記憶にあり得ない。
覚醒とともにあいつの記憶が薄れて行く。
笑顔の輪郭が消えてゆく。教室が端から消えて行く。
ダンスの音楽も消え、無音が耳に響く。
ただ、見慣れない色のヒマワリだけが色彩と存在を保っている。
シャワーの後、ふと視線を感じ窓の外を見る。
見慣れない色のヒマワリが、こちらを見つめていた。
ノスタルジックな色のヒマワリが。
Fin
「あいつ」は夢の中の恋人だったのでしょうか?
それともヒマワリが見せた幻覚だったのでしょうか(笑)
さて、大人カラーのヒマワリ、いよいよ始まってまいりました。
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株式会社フローレ21葛西店 長友