もうすぐ2018年が終わる。そして平成という時代も終わりに近づいている。
こんな風にドラマチックに言ってみると、なんてことのない明日が、何かこう特別の意味のある日のように思えてくるから不思議だ。
夏が終わるころにハロウィーンの準備を始め、ハロウィーンが終わるころにはクリスマス花材を決め、ほぼ同じタイミングで正月飾りの発注が終わる。そして松飾りの配達が終わるころには、一足早い春の花たちが店頭を彩る。
この町でオープンしたこの店も今年で8回目の年越しを迎える。
季節や時代を先取りすることは花の業界に限らず多々あると思う。だからそれほど珍しいことではないけれど、普段は何とも思わないイベントの先取りについて、たまにはオンタイムでイベントを楽しみたいなって思うこともある。
まだ見ぬ彼から、「メリークリスマス!」だったり「ハッピーニューイヤー!なんてサプライズブーケをもらってみたいけど、悲しいかな同業界。その年のトレンドを知っちゃてるから、ブーケの中身が想像できてサプライズも半減・・・。
そしてまた、「今日」という日が「昨日」に変わり、「明日」という日が「今日」に変わる。
だから2018年が2019年になることも、ただ明日が今日に変わるだけだと思ってた。
「こんにちは。」
お昼時の混雑もひと段落し、そろそろ遅めのお昼ご飯にしようかと考えていたころ一人の男性のお客様がやってきた。
右手には夕飯の材料と思われるスーパーのレジ袋。そして左手にはそのスーパーで買ったと思しきワンコインのプチブーケ。
「こんなところにお花屋さんがあったんですね、会社帰りに通る道なんですけど夜遅いから気が付かなかったんですね」
屈託なく笑うその笑顔が何とも言えず眩しい、たぶん一回りは年下だな。
ちょうど昨年の今頃、会社の都合でこの町に引っ越してきたというその彼はこの先の高台にあるちょっとリッチなマンションで一人暮らしをしているらしい。殺風景になりがちな男一人暮らしの部屋が嫌で定期的に近所のスーパーでお花を買っているとのことだ。
「でも、なんか気に入ったお花がなくて。何かお薦めのお花がありますか?」
初めてのお客様だしまだ好みがわからないから、ある程度馴染みのあるお花で、ほんの少し変わったお花を薦めてみた。
「これガーベラなんです。パスタシリーズで‘カルボナーラ‘って言うんですよ。ちょうどパスタのクリーム色と卵と生クリームが混ざったようま色のグラデーションが素敵だと思うんですけど」
その瞬間、二人が想像もしていなかったことが起きた。私自身まだこんな経験無かったし、目の前の彼だってこんな経験はしたことなかったと思う。
「まだお昼ご飯食べてなくて。そんなタイミングでカルボナーラとか言ったから、お腹が鳴ってしまって。。。」
自分の赤面顔がどれほど赤いかわからないけど、尋常じゃないほどの火照りを感じる。
「もしよかったら、今から、は無理だと思いますが今度食事にでも行きませんか?僕、未だこの町の事よくわからないし、いろいろ案内してもらえると嬉しいです。こんな状況で人を好きになるの初めてです。」
そういってその彼は、眩しい笑顔で屈託なく笑う。
今日と同じだと思っていた明日だけど、きっと私の知らない今日になる予感がした。
そして2019年。笑顔でやってくる未来がもうそこまで来ている。悪くない2018年の年越しだ。
Fin
さて、皆様にとって2018年はどんな年だったでしょうか?
そして2019年はどのような年にしたいですか?
良いことばかりだった人はさらに飛躍を。芳しくなかった人はカルボナーラを思い出してください。災いも転じれば福です!
来年もFlore21葛西店、よろしくお願い申し上げます!