夕方から降りだした雨のせいもあり気温も急に下がってきた。
それに呼応するように店の前の人通りも少なくなってきたことから少し早めの店仕舞いを始めたころだった。
そのお客様は月に1、2度程来店される年配の女性。スーパーの隣にあるこの店では珍しくないが、買い物袋越しにネギや豆腐などが見えなんとなくその日の献立が分ってしまう。
近しい接客を好むお客様もいれば、放っておいてほしいお客様もいる。そしてこのお客様は後者。
いつもあれこれ考えながら好みの花材を選び、ほとんど会話も無く会計を済ませ帰られる。
店仕舞いをしている中、一人の若い男性が来店された。
「Boa-noite ボアノイチ」
片言の日本語を話す彼はブラジルからある女性を探しにやってきたという。その女性は彼の父親の昔の恋人で、彼が犯した罪のせいで別れることになってしまった。もう一度会えるなら直接謝罪したい。
彼女は日本の【Tukishima-月島】という町に住んでいる【Yoko】。ただその彼の父も先月亡くなり目的は果たせなかったが、その気持ちだけでも伝えるべく【TukishimのYoko】という彼の記憶を頼りにやってきたという。その恋人は花が好きだったということからまずここへ訪れ、明日からもひたすら花屋を訪ねるという。
「ブラジル人の恋人を持つ女性か」ブラジルというとリオのカーニバルやイパネマの娘など、太陽やサンバ、ラテンで華やかなイメージだ。そんな女性は思い当たらない。。。
時間にしてみれば10分程度の立ち話だったが、ずいぶん密度の濃い10分だった。
再び店仕舞いを始めた頃、先ほどの年配の女性が戻ってきた。話を聞くと入口の傘立てに傘を忘れてしまったようだ。
特に話すこともなかったけれど、私も興奮していたのか、いつの間にか先ほどの彼との話をしている自分がいた。
ひとしきり話した後、「世の中色々な恋があるのね」特に興味のあるようには見えなかったけど、そう独り言のように言うのが聞こえた。
「そうだ、あそこにあるジニア、もしよかったら全部いただける?」
そして何事もなかったようにスーパーのレジ袋と傘、そして追加されたジニアの巻かれた花束を持って彼女は帰っていった。
今晩は。今日のお花はジニア・クイーンレッドライム。
ご存知の方も居られると思いますが、ジニアはブラジルでは欠かせない花。
スーパーのレジ袋を持った女性。実はYokoさんさったのでしょうか?
花言葉は「遠い友を想う」です。
ジニア含め各種のお問い合わせはこちらまで。
株式会社フローレ21葛西店 長友
Tel:03-5659-8750