僕は今、浮気をしている・・・。
不愉快な湿度をまとった罪悪感と嫌悪感が、僕に絡みつく。
大学の後輩の勧めで始めたInstagram。
サークル内の友人知人の日常を切り取った写真が日々アップされる。
それに対して「いいね」だったり、コメントをしたりして、昼夜なくコミュニケーションが取れるのが楽しかった。
操作に慣れてゆくにつれ、好きなタレントだったり、流行りのレストランや素敵な海外の風景写真などをアップしている人をフォローする。
フォローした方からのフォロー返しが嬉しかったりするし、フォロワーが増えると、何となく世間に求められているような感覚も楽しい。
そんなある日、ふと見つけたお花屋さんのInstagram。
花に対してそれほど興味があるほうではなかったけれど、そのお店のアップするお花達はどれも可愛くて、なぜか惹かれた。
「いつも素敵なお花の写真ばかりですね、毎回楽しみにしています!」
初めてコメントしてみた。
「ありがとうございます!お近くにお越しになる事あればお気軽にお越くださいませ!」
こんなやり取りから始まった、不思議な距離のある僕たちの関係。
{お花屋さん}の自撮りはアップされていないため彼女の顔は知らないけれど、彼女の作るブーケや、花にまつわるコメントなんかで彼女の雰囲気が分かる気がした。
「暑い日が続きますね。そんな日にはこんなお花はいかがですが?
ダークグリーンが素敵なこちら。お花の咲かないお花もあるんですよ。
フロックスのエンプティフィーリングス。」
「こんにちは。明日、近くに行く予定が出来たので、お伺いしても良いですか?先ほどアップしていたエンプティフィーリングスで自宅用のアレンジ作っていただけますか?」
「ありがとうございます!では、ぜひお待ちしております!」
そして僕は今、{お花屋さん}に向かっている。
昼の山手線は空いていて、立っている人もまばらだ。
そして僕は今、目の前に立つ女性に一目惚れをしてしまった。白いコットンのシャツがとても似合うショートカットの女性。
これから別の女性に会いに行くにもかかわらず・・・。
「こんな不誠実な気持ちで{お花屋さん}に会っても良いのか?」
「どーせ、単なるInstag繋がりだけだろう?別に彼女でもあるまいし」
僕の中で、僕と僕が、答えの出ない口論を始める。
ふと、Instagramのメッセージ通知が鳴る。
「ごめんなさい、急な打ち合わせが入って少し遅れてしまうかもしれません!」
「大丈夫です!僕も少し遅れそうなので。では後ほど。」
携帯をポケットに戻し、ふと見上げると彼女はすでに居なくなっていた。
「そうか、今の駅で降りたんだ。でも、これでよかったのかもしれないな。」
ピントの合わない思考のまま次の駅代々木で下車し「お花屋さん」へ向かう。思ったより駅から遠く
「最寄り駅は原宿じゃん」
そう独り言ちた。
外の強い日差しが入口のガラスに反射しほとんど中が見えない。意を決し中に入る。
「ごめんください、今日お花をオーダーしたものですけど。」
奥から{お花屋さん}が出てくる。
「ごめんなさい、さっきお店に戻ったのでバタバタで。こちらがご依頼のアレンジです。お気に召して頂ければよいんですけど・・・。」
想像通りの素敵なアレンジメントだった。そして、これは想定外だったな。
お花さん、白いコットンのシャツがとても似合うショートカットの女性だったなんて。
Fin
こんにちは。
ふと見上げると雲一つない青空。でも遠くを見ると絵にかいたような積乱雲。
夏ですね。(笑汗;)
さて、本日ご紹介した六合村の「フロックスのエンプティフィーリング」。
いかがでしたでしょうか?花が咲かない代わりにガクが成長したフワモコな感じ。
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