毎年この時期になると1通の封書が届く。
僕にとっては、これが彼女からの年賀状。多少時期がずれてはいるけれど。
あれは確かこの店の5周年記念日だったから、約10年前の春。
「今日は私の主人を連れてきたの。この春の定年を機に、これから家に飾るお花は主人に頼もうと思って」
そう言ってご主人をご紹介下さったのは坂の上に住む老夫婦のマダム。
毎週金曜の朝に来店され、水揚げもままならない花材の中から好きなものを選んで、早々に帰られる。
選ぶ花材は旬なものはもちろん、売れるかどうか迷うような珍しいものでも楽しそうに選んで行く。
その様は迷いがなく豪快でありながら、各花材を選ぶ姿はとても品があり繊細だ。
「今日は私が参りました、何分花には疎くて、いろいろ教えていただけますか?」
定年後、3人のお子様も自立され、ようやく2人きりで生活することに少し戸惑っているようでもあり、
楽しそうでもあるお2人を見ていると、こちらまで何となく楽しくなってくる。
「そういえば、最近見かけないわね、あの坂の上のご夫婦」
ほかの常連さんとそんな会話をしたのも忘れたころ1通のエアーメールが届いた。
差出人はあの坂の上に住むマダムで、見覚えのある懐かしい文字だった。
消印は東ヨーロッパの小さな国からのもの。中には長い手紙と数枚のパンジーの写真が入っていた。
「いろいろ悩みましたが、主人に付いて行くことにしました。
主人の定年後、やっとゆっくり出来ると思ったのですが、そうもいかずに。
でも楽しくやってるのよ、近所にお花屋さんが無いのが少し寂しいけれど、最近では作るようにしたの。
またお手紙いたしますね」
長い間医師をされていたご主人の夢はボランティアドクターで、医師の少ない町で困っている人々を助けたいというものだったそうだ。
「この年で一人になるもの寂しいので、少し苦労かけるかもしれないが、ぜひ君も付いて来てほしい。」
そういってご主人は2度目のプロポーズをし、マダムがOKしたという。
この時期の空気はとても澄んでいて、見上げた空はとても美しい。
そして、マダムが住む庭に咲く花と、ここに咲く花が呼応しているようだ。
なんとなく素敵な週末になりそう。
ようやくパンジーが出始めました。まだまだ寒い日が続きますが、春は確実にやって来てますね。
おかげさまで、葛西店の「パンジーフェア」大盛況でした。ありがとうございました。
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