Weekend Flower -カランコエ・ウェンディ-

君の国は、何か細菌兵器にでも攻撃されたのかね?

アメリカ本社から来たVIPが僕にそう尋ねる。

 

この時期、日本の街のあちこちで、白い花が咲きこぼれる。

そう、ティッシュで作られた白い花。

恐らく数年後には季語になるな、この「花粉症」という春の使者。

 

幸いなのか時代遅れなのか、アレルゲンがオーバーフローしていなかったこの僕にもとうとう今年、春の使者がやってきた。。。

 

「次の方、診察室にお入りくださーい」

たぶん、この時期のGDP成長率ってひどいんだろうな、なんて考え事をしながら、しぶしぶアレルギー科に向かう。

 

「今日はどうしましたか?」

振り返ると、そこに居たのは、忘れもしない大昔のいじめっ子の彼。

ふと見上げると、そこに居たのは、たぶん初恋のあの彼女。

 

「結論から言うと貴方の病名は【hay Fever】つまり花粉症。残念だけど特効薬は2つ。1.うまく付き合う。2.この国から出る。残念だけど完治はないから、そう、ご愁傷様。通院は意味がないけど、症状がひどいときは来院して、処方箋は出すので。他に何か質問は?」

 

「君は、本当に女医さんになってたんだね」

遠い日の記憶がよみがえる。ドクターになる夢を持つ同世代の女の子に嫉妬し、ふざけたついでに取り上げた彼女の筆箱、誤って踏んすけて壊したのを彼女も覚えているのだろうか。
11歳の春、桜が散るころに転校してきた彼女は、12歳の春、桜が芽吹くころ転校していった。そして、桜が満開な今、彼女はここにる。彼女は、こんな軌跡を奇跡と感じているのだろうか。

 

「次の方、診察室にお入りくださーい」

(やっぱり、市販の薬が効かないみたいで。)来院の理由は何でもよかったんだけど、話すことは山ほどある。どこから話してよいかすら悩ましいなどと考えながら診察室に。

 

彼女はまた僕の前から居なくなっていた。「なんて日だ。。。」そう、なんて日なんだ。。

 

「あなたが来院されたときに渡すように頼まれた封書がありますので、これを。」

代わりのドクターに差し出された封書を開けると1枚のポストカード。消印は、マダガスカルの首都アンタナナリブ、そしてMEDECINS SANS FRONTIERESの封書。

「花粉症の完治の1つは日本を出ること。トライしてみますか?もしトライするなら、あの春の筆箱の件、無かったことにしてあげるので。」

近所の花屋でマダガスカル産の花を買い、たっぷりの氷にラムを注ぐ。そして、国際免許申請用紙にサインをしながらパスポートの有効期限を確認する。

マダガスカルにも桜は咲くのだろうか。。。

 

今週はカランコエ・ウェンディ。俯いた花房を下からのぞくと、なんともチャーミングな雰囲気。

島の90%が固有種というこの島が原産のカランコエ。

遠い彼の地に思いをはせ、妄想トリップいかがですか?

そんなウェンディのお問い合わせ、またはその他「お花の仕入れ」については葛西店・長友までお願いします。

 

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