発刊の言葉

秋/2011 の記

厳しい経済状況の中、売り上げは減少する。社員もいまひとつ元気がでない。

困難な問題に直面したとき、決まって相談にうかがう先がある。この日もH社の社長と話をしていた。「花業界の市場も仲卸も、問屋といわれるところが小売店のリテールサポートがないのはこの業界ぐらいだ」「だからフローレでそれができれば必ず小売店から信頼していただける」「それもフローレしか、できないことをすること」。この三つの言葉へいくまで、いくつもの事例や必要性を説いていただいた。

フローレには三つの営業拠点がある。世田谷市場場内、大田市場場内、葛西のロジスティックス部門(2016年9月に場内も開設)。これらの拠点から一週間に一回、お客さんに知らせたい情報や知っていただきたい情報を発信する。その情報が取れたてで、旬のものであればあるだけ喜んでいただける。「ホットニュース」の名に恥じない情報を一週間に一回、出し続ける。

私は、これとは少し違う角度から、H社とフローレの社員に私の考えていること、学んでもらいたいこと、花業界の動きや社会の出来事を伝える、このようなコンセプトで始まった。

(中略)

3月11日に日本を襲った大震災以後、私たちは持ち続けていた価値観の転換を求められている。それはフローレだけが勝ち残り、フローレだけが生き続けるという理念は通用しなくなっているということだ。

小学校の頃だと思うが、静岡の登呂遺跡の見学に連れて行かれ説明を受けた。竪穴式住居や水田跡、千八百年もの前、集落全体で人々は生活を支えあっていた様子がうかがえた。

いつの頃からか「競争」「自己責任」「勝ち組、負け組」「受益者負担」などの言葉が当然のように使われ、一人一人が分断され、互いが干渉しないことが好ましいという風潮まであらわれた。誰からも干渉されないことが快適な生活だとしたら、豊かな生活とは反対側にあるように思われる。

豊かさを計る物差しの一つが、花が生活の場で、花があらゆる場面で、どれだけたくさん使われているかが一つの基準といえる。その豊かな社会、豊かな生活の根っこは間違いなく、人と人が助け合い支えあうことにあると思う。苦しんでいる人、困難な問題を抱えている人、社会的弱者にこそ、社会の光が当たらなければならない。

花を生業としていることに大きな誇りと喜びを秘めながら、より豊かな社会とより豊かな生活の実現へ「ホットニュース」がその一助になれば幸いです。これまでホットニュースにお付き合いいただきました読者の皆様に感謝し、発刊の言葉といたします。


企画室より

2011年秋、ホットニュースは100号の発行を機に冊子になりました(非売)。今稿は、その冊子一号の発刊にあたり、小池社長が記した言葉を掲載しました。

2009年の発刊以来、小池社長が抱いてきた「豊かな社会と豊かな生活の実現」によせる希望、そして「花は人をしあわせにできる」という信念を、今あらためて発信することで、ひとりでも多くの人に希望をあたえ、未来への懸け橋になれば幸いです。

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